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知念中学校グラウンド整地問題

沖縄タイムス 1973年4月5日朝刊

自衛隊の力を借りるのはごめんだ!

知念中学校運動場整地問題

自らの手で整地
多彩な顔ぶれの若手グループ
測量から設計まで一手に

【知念】われわれ仲間の力でやってみよう。自衛隊導入問題で村内外に大きな波紋を投げた知念中学校の運動場整地作業が、二日から若い人たちが寄り集まってできたグループの手で始まった。自衛隊に代わって奉仕作業を買って出たのは那覇市繁多川385-16、会社員・岸本建夫さん(29)ら約30人からなる若手の人たち。メンバーには会社員や公務員、公社職員などのサラリーマンをはじめ会社、スナック経営者や設計士、重機運転手などの建築関係者もいるといった多彩な顔ぶれ。

立ち上がった
泡盛仲間

 運動場用地の測量から設計、模型図などもグループの手でやってのけたほど。この日の整地作業には時間の都合のついた岸本さんら八人が参加、グループの間で調達したブルドーザーとシャボの二台を使って校地に隣接したキビ畑となっている用地の敷きならしに取りかかった。
 同グループは、那覇市内の同じ飲み屋での飲み仲間が集まってできた。集まれば酒をくみかわしながらお互いに政治問題についてもよく話し合ったり、議論しあったという。二月中旬ごろ自衛隊による同校の整地作業問題が持ち上がった際、飲み仲間の間でも話題になった。「実践の伴わない議論だけでは意味がない。自分らの力でグラウンドの整地はできないものか」と話しは進み「よしやってみようじゃないか」となった。この話しが飲み仲間に伝わっていくうちに賛同者も増えて当初十人足らずだったのが三十人近くにふくれあがった。
 「政治的な意図は全く持っていない」とグループの人たち。しかし予算がないから自衛隊に頼む。いっぽうでは自衛隊だからと反対するーといったイデオロギーの対立だけでは、問題の解決はありえない。この観点から「自分らの事は自らの力での気概をもって実践してみよう」と村当局に整地の奉仕作業を申し出たという。
 整地作業に関する村当局の予算は、重機類の燃料費としての二十万円だけ。同グループにしても二十万円の予算内でできるとは思っていない。足りない分は労力でカバーしようと村内外の人たちに協力を働きかけるといった
人海戦術のもとに「必ず完成してみせる」とやる気十分なところを見せている。いっぽう用地(16,500平方メートル)の造成だけに最低400万円は必要と踏んでいる村当局では「ほんとうにやれるのだろうか」と同グループの奉仕作業に首をかしげながら工事の成り行きを静かに見守っている。
 同村(伊集盛郎村長)は、知念中学校の運動場を新設することになったが、整地費四百万円が捻出できないという点から二十万円(燃料費)でやってくれる自衛隊に整地作業を要請する準備をすすめていた。これに対し村内の革新団体、沖教組などが「教育の場に自衛隊の導入はまかりならぬ」と反対して問題になった。しかし、さる三月六日に開かれた「中学校運動場の整地問題」についての村議会全体協議会で、整地作業には民間団体の奉仕作業を優先させるが、もし実現しなければ自衛隊の導入をはかることを賛成多数で議決している。このことから自衛隊の導入問題は、今回の同グループの整地作業の成否にかかっているといえる。

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